宇宙農民基地

土地との出会い・決意

私たちは新しいひらめき・アイデアが浮かんだとき、それを宇宙会議で話し合う。

そのアイデアが宇宙会議でどんどん輝き始め、想像しただけでワクワクするようになれば、そのアイデアが成功しそうだと思い実現するために行動する。

私たちの根幹にあるのは自分たちが「理想とする生き方を自ら実践すること。」そしてそれを表現し、世界を楽しくすること。夜も眠れないようなワクワクを多くの人に伝染させること。

八ヶ岳移住から約3年、2011年に宇宙農民は新たなミッションに取りかかった。

かねてより活動拠点が欲しいと感じていたのを実現できるチャンスがやってきた。

その場所は標高650m、敷地面積は600坪弱、日当りがよく八ヶ岳周辺でも景色に関してはダントツで気に入った場所。

様々な要因が後押ししてその土地を購入できることになった。

具体的な建物のプランを考えるにあたって、プロの方のアドバイスをいただいたり、宇宙農民としてどうすれば楽しいかを、とにかく話し合った。

私たちが出した結論は「DIYで基地を建設する」という選択だった。

この時点で私たちのDIYの関する知識・テクニックは皆無に等しかった。

縄文遺跡

宇宙農民基地の建設プランを具体的にしていく中で、建設予定地一帯が縄文遺跡に指定されている場所であることがわかった。

八ヶ岳周辺は南麓から西麓にかけて縄文時代に集落が点在する地域であるというのは知っていたが、私たちが直感で気に入った土地が縄文人達のお気に入りの土地であったというのは嬉しかった。

土地の所有という概念をおそらく縄文人達は持っていなかったはずで、そうなると彼らは最も直感的に居心地のいい場所にすむはずで、彼らの直感と宇宙農民の直感がズレていなかったことに答え合わせのような嬉しさを感じた。

それから調査の方々が現場に入り念入りに遺跡の調査をし、発掘した物を丁寧に保管し、航空写真や位置情報を駆使してデータにまとめて行った。

最も驚いたのは私たちが図面上でキッチンに予定していた場所から縄文時代の炉が出てきたことだった。縄文時代の炉は彼らの生活の中心である火を焚く場所で、料理を行い、家族が集った場所で、いい時間を過ごした場所だと思うと嬉しかった。

鉄骨とイームズハウス

隣町で倉庫に使用していた35坪の鉄骨を基地の躯体として譲ってもらえることになったので、その鉄骨をベースに宇宙農民基地を作ることになった。

モダンな感じのデザインがいいねという部分はメンバーで共通していたので、いろいろな建築の写真を見る中で、チャールズ&レイ イームズの家を見に行こうという話になり、ロスに飛んだ。

イームズハウスは地形と自然、工業製品とアートが渾然一体となってすばらしい空間を演出していた。

この視察でより具体的にプランが出来上がった。

基礎工事

建築の工事で一番始めにするのは基礎工事。

私たちは基礎工事をやったことも見たことすらなかった。

しかし、不思議なもので、いつも助けてもらえる人が現れるのが宇宙農民。

基地の周辺で田んぼを借りようと思い、たまたま話しかけた人に「これから建物を建てるんです」とか、こういうことをやりたいんですと話をしたときに「やったことがあるのか」と聞かれた。正直に「ないです」と答えると「今は引退しているけど元々土木の仕事をしていたから任せろ」とプロのおじさんが助けてくれることになった。

のんびりしている私たち以上に基地の土地の造成のことや、建設機械のことなど心配してくださり、様々な力を貸してくれて、最終的に元基礎屋のおじさんに声を掛けてくれて工事はみるみるうちに進んだ。

基礎屋のおじさんからは型枠(コンクリートの型)を借りることが出来て、型枠を手作りする手間を省けただけでなく、余った時間を使って墨打ち(正確な位置決め)の方法や高さの出し方などを習った。

このときに私たちは基礎の構造や材料、どういった作業が必要になるかを少しずつプロから学んだ。

そしてコンクリートの流し込みには仲間が駆けつけてくれて無事に基礎が完成した。

鉄骨工事

鉄骨屋さんに依頼していた鉄骨の加工・塗装が完成したので基礎工事が終わってから一気に立ち上げていった。

とにかく最初は何もわからないが、見ているうちに何となくわかるようになり、ボルトを留めたり、柱を押さえたりした。

わからないものがわかるようになっていく、世界が開けて行く感覚がすごく好き。

屋根工事

鉄骨が形通り立ち上がってひとしきり感動した後は、次に屋根を作り始めた。

当初の予定では屋根材まですべてセルフビルドで工事しようと考えていたが、屋根材を貼るのに時間がかかりその間に屋根の下地板に雨が当たりカビが発生したり、腐りの原因になるリスクを考え、屋根の防水・板金工事だけは板金屋さんに依頼した。

板金工事を手伝わせてもらいながら、工事の依頼をして本当に良かったと思った。

板金屋さんの人柄もすばらしかったし、板金工事に特殊な工具がたくさんあることをこの時初めて知った。

板金工事を自力で始めていたら、材料を取り寄せてみたものの特殊な工具を持っていないために工事の不備やストップがあっただあろうし、結果として当初想定したリスク通りの事態になりかねなかった。

おかげさまで立派な屋根が出来上がった。

下地工事

下地作業はとても大事だが、出来上がった建物からそれをイメージできる人は少ないと思う。

下地とは壁を打ち付けるための部分で宇宙農民基地ではここに木材を使った。

この部材を入れる間隔(ピッチという)や木材のサイズなど、何も知らない私たちはひたすら人に聞いたり、本を読んだり、Google画像検索で工事中の写真を見て想像したりして工法を決めた。

最も既にある材料(私たちの場合は古い鉄骨)を使って、それを素に様々なパーツを組み合わせてやる方法となると同じような事例はなく、毎日寝ても覚めても頭の中に立体を思い描きながら工事を進めた。

100年に一度の大雪

八ヶ岳南麓は夏は涼しく、冬は寒いが雪が少ないので移住者も多いエリアとして有名だ。

雪を経験したことのあまりない宇宙農民にその試練は突然やってきた。

山梨県で100年に一度と言われるほどの観測史上前例のない大雪が降ったのだ。

当時別の物件にすみながら宇宙農民基地の工事を進めていたが、一晩で1m以上の雪が降り、交通はストップし、住んでいた家のドアが雪で開かないほどの猛雪に見舞われた。

宇宙農民基地の屋根の大きさは150㎡ほど、そこに1mの雪が載っているとすると新雪でも約15tの雪が屋根に載っている計算になる。

柱に補強はしていなかったし、骨組みに屋根だけがついている状態で、最悪の条件だったので、さすがに潰れているだろうと思った。

大雪から数日後、なんとか道路が開通したので基地に直行し、私道を泳ぐように進むと何事もなかったように基地が建っていた。すぐに屋根に登って雪下ろしを始めたが、このときの安堵は忘れない。

工事再開!

大雪で溜まった雪がゆっくりと溶けて工事を再開した。

窓のサッシを施工したり、配管工事をしたり、床材を施工するために大引や根太と言われる下地を設置していった。

どの行程も情報収集しながら工法を決め、材料選定をし工事を進めた。

構造はわかってしまえば「なるほど、そういうものか」という感じだが、構造から仕上げまできちっとした施工をする大工さんの偉大さはすごく感じた。

このころ海外のDIY動画やサイトをたくさん見た。

特にアメリカはDIY大国であり、ものすごい量の情報がある。当然クオリティの高い物もあればそれなりのものもある。

しかし、そこに共通しているのはそれぞれのものづくりのなかで、できたものの質よりもそのプロセスを楽しんでいる姿勢だった。

基地の建築を始めてしばらくするうちに大工さんのクオリティに近づけようと傾いた頭をもう一度ニュートラルに戻してもらえるような情報がたくさんあった。

そう、私たちのやりたいのは創造性を高め、ワクワクし楽しむこと。

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